公開: 2020年5月12日
更新: 2020年5月12日
私たち人間は、古代ギリシャの時代から、「どのように思いをめぐらせれば、間違いのない結論を得ることができるのか」を考えてきました。哲学者のアリストテレスは、「AならばB」「BならばC」が成り立っていれば、「AならばC」を言えることを、弟子たちに教えました。これが、論理学の始まりです。この規則は、専門用語で、「推移律(すいいりつ)」と呼ばれています。
古代ギリシャに始まって、中世ヨーロッパの修道院で研究が進められた、命題論理学は、文の作り方で、誤りのないやり方を考えました。近代ヨーロッパでは、文の一部分である主語や目的語を変えても、正しい推論ができるように、動詞などを中心とした述語と主語や目的語との関係から、推論のやり方を考える「述語論理」の研究が始まりました。
これらの論理学では、文の意味そのものは問題にしなくても、文と文をどうつなげるかや、主語や目的語と述語の関係を調べることで、与えられた推論が正しいと言えるかどうかを見きわめることが問題でした。現代では、コンピュータを使って、ある文章が「正しそうか」どうかを判断できるようになりましたが、それは、このような論理学の方法を使って、誰かが言ったことの正しさを確かめられるようになったからです。
しかし、この問題をつきつめて考えてゆくと、「Aである」が正しい場合でも、ある場合に「Aでない」が正しいことを確認することが簡単ではないことが分かりました。また、「いつかはAであるが成り立つ」のような、今は「Aである」は成り立っていないが、「Aである」は間違いとは言えないような文章について、それが正しいかどうかを判断することも簡単ではないことが分かっています。